尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

生理的嫌悪感をいかにして演出するか?  庵野秀明:劇場版新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを君に

ええーとすでに私の精神構造に深く入り込み忘れたくても忘れられない作品がエヴァです。中学から高校くらいまでずっと心中はエヴァエヴァしてました。最近はいろいろと好きなものも増えて
脳の片隅に追いやられていますが。当時は感性がビンビンだもん。こんな映画みせられたら無理よ。精神大混乱ですよ。でも大好きなんだよ。

"誰もが知っている作品に今更おこがましいですが、便宜上かるく紹介します。軽くね。
テレビ版「新世紀エヴァンゲリオン」が26話分あって、この映画は25話と26話の焼き直しとして位置づけられてます。そりゃテレビで放映しても自主規制になるよってくらいの気分悪い映画。ダウナー系ドラッグムービーベストワン。次点は火垂るの墓。"
"ストーリープロットとしては正直イデオンです。みんな死亡エンドです。厳密的には個体の持つATフィールドがすべて溶けて人類が群体に進化?します。一つの生命となるわけですな。
SFのアイディアとしてはまあ凡々ですが、カバラ密教精神分析のうんちくをペダンティックに取り込みまくった結果、インターネットのパソコン通信から火がついて考察大好きおじさんの餌食となったわけです。繰り返しますが、ただのイデオンの焼き直しです。庵野死ねと言われてそれを映画に取り入れるほど、オタクへの憎悪を燃やしたカントクが、ヒロインを次々と無残に殺していく悲しみ。"
内容に関してなんやかんやいうのももはや考察されつくした作品に対して逆に不誠実なので、演出や画面作りについて語ります。これについてもさんざ書かれているよなぁ・・・
・対量産機戦のBGMにおける対位法と、深作欣二バトルロワイアルについて
アスカの狩る暴走弐号機と、量産機13機の凄惨なバトルシーンはこの映画の白眉ですが、後半はバッハの「G線上のアリア」が流れます。ていうかこの曲、この映画で知りました。
"このシーンは弐号機にやられる量産機が血をまき散らしながらやられていくすさまじい画になっており、
アスカの狂気的な表情と叫びがバッハの美しい旋律と変に調和していい感じになっております。
(体操座りしてうなだれるわれらが主人公も情けなくて良いです、ヒーロー信仰の強いアメリカでは不評だろうな)
その後アスカは量産機にボコボコにされるのですが、弐号機は宗教画の天使や鳥葬、アスカは集団レイプをそれぞれ暗示する悲惨なやられ方をします。
それもこれも全部バッハが効いているのですよバッハが!"
"庵野秀明は新劇場版でも同様の対位法演出をつかっています。対位法だからバッハって。意味が違うよね。わざとか?
 残虐なシーンで「今日の日はさようなら」という童謡を流しています。(これまた被害者はアスカ)"
んで、まったくおんなじ演出を、深作欣二が「バトルロワイアル」で使っているよね、ということ私は言いたい。
柴崎コウ演じる相馬光子が、同級生の女の子を鎌でぶち殺すシーン。後半は銃器でのキル数が多いので、序盤の刃物を使ったシーンは印象に残る。
そこで「G線上のアリア」が流れるわけですよ。やだ・・・恥ずかしい・・・もろエヴァやんけ!巨匠が影響受けてんじゃないよ!
よくかんがえたら相馬光子の過去シーンで黒幕に縦書き極太明朝体ノローグも出てくる。サイレント映画のスーパーのように出す手法。これもエヴァやってたなぁ。だからパクんなよ!
なーんてね。むしろグッジョブ。かっこよければオールオーケー。バトロワではこのシーンと武が曼荼羅みたいな自作の絵を見せて前田亜季にひかれるシーンが好きです。
ともあれ70歳だった深作欣二にも影響を与えるインパクトを持ったair/まごころを君に

火炎放射器のシーン やりたかったんだね・・・
庵野秀明といえば岡本喜八オマージュ。トップをねらえ!シン・ゴジラ、この作品でもちゃんとやってます。
元ネタは「沖縄決戦」の火炎放射器で米軍が立てこもった沖縄市民を焼き殺すところ。どちらも火炎を放射すると女性の悲鳴が聞こえるところがミソ。
エヴァではUN軍がネルフのスタッフに対してやっているのだが、これやる必要庵野
とはいえインパクトあるシーンで、この見るのも苦しい映画の中で一番残酷なシーンだったり。つらい。くるしい。

火炎放射器といえばプライベート・ライアンでもトーチカの制圧のために使ってたなぁ。立てこもるやつが出てきたら手りゅう弾じゃない、絵的に派手かつ残酷な火炎放射器ですね。面で制圧。
ゲームの地球防衛軍2では洞窟ステージで活躍します。線じゃない、面で制圧。

 

 

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