尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

愛すべきケレン味、必殺技を叫ぶという事  庵野秀明:トップをねらえ!

おっかない敵があらわれまして、人間が何かしらこまって、誰かしらが、倒す。

というプロットで共有しているのに、アメコミ映画に無くて日本のアニメや特撮だけにあるものはなんでしょ。


それは必殺技の叫びです。

ほんとうに大事なことです。


スパロボをやったことのある人なら、この重要性が分かるはず。
ボルテスVの「天空剣、必殺、Vの字切りー!」だったりダンクーガの「断空光我剣!やぁってやるぜ!」などなど。意味がわからなければわからないほど良いです。

ガンダムには必殺技の叫びはありませんが、富野節がある)

 

表題のトップをねらえ!はかいつまんで言うと炎の熱血友情ハードSF宇宙科学勇気根性努力セクシー無敵ロボットスペクタクル大河ロマン(公式)です。観てみると本当にそうなんだから仕様がない。
私はその中の「熱血」と「ハードSF」というまったく相いれない要素を混ぜたところにビーフシチューを作ろうとして結果肉じゃがが誕生しました、みたいな日本人的創意工夫を感じます。まったくたとえがうまくありませんね。

本作の魅力を説明すると際限がないので、いっちばんキッチュな部分をば。
何といってもガンバスター大暴れの五話。カタルシス回。ドーパミンどばどば出る。
「スーパーイナズマキック!」ではなく
スウウパアアアアアア!!!!!イナズマああああああ!!!!!!キィイイイイイイイイックッ!!!!!!」
じゃないといかん。(本当に日高のり子佐久間レイの声はいいなぁ。最近の声優は必殺技を叫べるのどを持っているのか。かめはめ波打てるのか。)
「ホーーミング!レーーー↑↑↑↑↑ザぁーーーー↓↓↓↓↓↓↓」
じゃないといかん。
「ダブルバスターコレダー!!!!!!うわあああああ!!!!!」
もう最高。理屈ではなく熱量や声量の問題。

トップをねらえ2!も「フィジカルキャンセラー全開!エキゾチックマニューバ!」というなんだかよくわからないけどかっこいいセリフがありましたね。初めて聴いたときは意味わからないけどマニューバという単語の響きが好きになりました。
作品を好きになるタイミングというのは、こういう細部に謎の魅力がある場合がおおい。


話を戻すのだけれども、最近のジャンプマンガはハンターやブリーチのおしゃれ必殺技スタイルばっかで叫ばない。甚だ遺憾です。ルフィさんが一番で居続けられるのも、必殺技叫ぶからですよ。
イーストブルーの時のラスボスに対する決め技はゴムゴムの鐘、大槌、ときて斧でしたね。無骨な感じでかっこよい。特にサメであるアーロンに対して斧で仕留めるって、海賊っぽくてかっこいい。しかも当時はルフィの見た目が少年みたいだったのでギャップもあったね。)

リンかけ聖闘士星矢なんて必殺技だけで成り立ってるような漫画なのにすごい面白いんだよ?
かっこいい青年が中二っぽい技名をぼそっと言うのもいい。でもこの絶叫文化だけは消えないでpureなのである。
ゴッドフィンガーかっこいいよね? グレンラガンの口上もいいよね? ダイレンジャーの名乗りめちゃめちゃかっこいいよね?
こういうバカみたいな演出もっともっとやってよ!!!クリエーターは大人ぶってかっこつけんな!!!声優は腹から声出せ!!もっと叫べキャラクター!(でも映画ではやらないでね、あくまでジャンクフードとしての作品です)


なんで骨折レベルの怪我でも最近のアニメキャラは叫ばないし泣かなくなったのだろうか。悟空も初期は腕折られて叫んでたのに。ピッコロ倒して感極まって泣いてたのに。もしかして規制されてる?
とはいえ、原作が漫画だったらしょうがないというのもわかる。漫画には決定的に音の要素が無い(ジョジョや福本作品は作者が天才なので音が聞こえている)。
だけども!問題は今の特撮です。平成ライダーです。冷静なのがかっこいいという新手のポリコレなのか。主犯はオダギリジョーか!?
外連味は日本の演出文化遺産だよ・・・・・・

西洋人にはこういうのあんまり理解できないらしいですね。あくまでヒーローはクールに、ということかしら。
歌舞伎がないからか。見得を切るということ、口上を述べるということがいかにかっこいいか。理解してくれている海外のオタクはいるのかなぁ。ジョジョのラッシュは好評らしいけどさぁ。
仮面ライダーの変身もさ、もっと気合い入れてよ!イケメンがしれっと気のない感じで「・・・変身」じゃないよまったく。
ゴリゴリのおっさんが「変身ッツツ!!」だろが!おっさんや若い女の子(本来かっこいい事から遠い人たち)がバカみたいなカッコしてしょうもないことを真剣にやってるからかっこいいの。
歌舞伎の「暫」と「白浪五人男」をみて日本の外連味文化とはなんぞやということを勉強しよう。

 

あと、大感動のラスト→縦書きで左から右へ移動するエンドロールのカッコよさでなぜか涙腺が緩みます。東宝映画黄金時代のオマージュ。素敵。

 

トップをねらえ! Blu-ray Box

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